わらび粉

わらび粉(わらびこ)はワラビからとれるデンプンを乾燥させて粉末状にしたもの。片栗粉での代用もできるが片栗粉は味は劣る。

概要

ワラビの根から採取した灰褐色の粉で粘りが強く、デンプンの粉臭さがない。

精製には手間隙がかかり、ワラビの地下茎を掘り、叩いて、ほぐして、洗って、澱粉を取り出し乾燥させる工程を経てわらび粉になる。10kgのワラビの根から取れるわらび粉は、わずか70gとされ、根を掘り起こす作業は冬の寒い時期に行われ、厳寒期に冷水で何度も洗って精製される。

近年流通するわらび餅の大半はわらび粉以外の澱粉が使用される[1]

歴史

古来よりわらび粉は食材として使用されてきた。精製には手間隙がかかるので、等と比較して著しく効率が低いため、庶民は日常的には食さず、身分の高い者が食したり、凶作時に非常食として食されたという説もある[2][3]

近年では自生するワラビの減少、採取の困難により生産量が減少している。

料理

わらび粉から作られたわらびもち

わらび餅をはじめ、各種の食材として使用される。

食料以外の用途

和傘提灯着物の染色等の用として使用された[4]

脚注

  1. ^ 井川佳子「市販わらび餠粉(サツマイモ澱粉)の性質(I)」『日本調理科学会誌』第26巻第2号、日本調理科学会、1993年、110-113頁、doi:10.11402/cookeryscience1968.26.2_110、ISSN 0910-5360、NDLJP:10813257。 
  2. ^ 田中謙二「劉致作散曲「上高監司」攷」『東洋史研究』第13巻第4号、東洋史研究会、1954年、270-289頁、CRID 1390572174787070976、doi:10.14989/139013、hdl:2433/139013ISSN 0386-9059。 
  3. ^ 服部英雄「歴史学と景観保存」『歴史学研究』第677巻、歴史学研究会、1995年、139-143頁、ISSN 0386-9237。 
  4. ^ 藤本滋生「本邦の自生植物とその澱粉について」『澱粉科学』第24巻第4号、日本応用糖質科学会、1977年、148-157頁、doi:10.5458/jag1972.24.148、ISSN 0021-5406。 

文献

  • 長倉三郎「岐阜県北部(飛騨)のくりぬき用具とわらび粉の製造工程」『物質文化』第6巻、1965年、43-50頁、doi:10.11501/4417985。 
  • 五島淑子『19世紀中葉の日本の食生活に関する研究 : 「防長風土注進案」と「斐太後風土記」の分析を通じて』 奈良女子大学〈学術博士 乙第21号〉、1991年。doi:10.11501/3052686。 NAID 500000073345。https://hdl.handle.net/10935/2867 
  • 山本直人「縄文時代における野生根茎類食糧化の基礎的研究」『名古屋大学文学部研究論集. 史学』第41巻、名古屋大学文学部、1995年、83-130頁、doi:10.18999/jouflh.41.83、hdl:2237/5533ISSN 0469-4716。 
  • 山本直人「野生根茎類食糧化に関する事例研究 : クズとワラビを中心にして」『名古屋大学文学部研究論集. 史学』第42巻、名古屋大学文学部、1996年、43-99頁、doi:10.18999/jouflh.42.43、ISSN 0469-4716。 
  • 松島憲一, 根本和洋, 敦川亜紀子, 加藤友希, 大崎正太, 西田弥生, 南峰夫「下伊那郡大鹿村において食用とされる野生植物について」『信州大学農学部紀要』第49巻第1-2号、信州大学農学部、2013年、43-50頁、hdl:10091/17021ISSN 0583-0621。 
  • 笹本正治「歴史学から見た内陸文化研究 (内陸文化研究会報告)」『内陸文化研究』第1号、信州大学人文学部、2001年、39-60頁、ISSN 13464108、NAID 110000091406。 

関連項目