ガンベル分布

ガンベル分布
確率密度関数
Probability density plots of gamma distributions
累積分布関数
Cumulative distribution plots of gamma distributions
母数 μ R {\displaystyle \mu \in \mathbb {R} }
η > 0 {\displaystyle \eta >0}
( , ) {\displaystyle (-\infty ,\infty )}
確率密度関数 1 η exp { ( x μ η ) } {\displaystyle {\frac {1}{\eta }}\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}}
× exp [ exp { ( x μ η ) } ] {\displaystyle \times \exp \left[-\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}\right]}
累積分布関数 exp [ exp { ( x μ η ) } ] {\displaystyle \exp \left[-\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}\right]}
期待値 μ + γ η {\displaystyle \mu +\gamma \eta }
中央値 μ η log ( log 2 ) {\displaystyle \mu -\eta \log(\log 2)}
最頻値 μ {\displaystyle \mu }
分散 π 2 η 2 6 {\displaystyle {\frac {\pi ^{2}\eta ^{2}}{6}}}
歪度 12 6 ζ ( 3 ) π 2 {\displaystyle {\frac {12{\sqrt {6}}\,\zeta (3)}{\pi ^{2}}}}
尖度 12 5 {\displaystyle {\frac {12}{5}}}
エントロピー log η + γ + 1 {\displaystyle \log \eta +\gamma +1}
モーメント母関数 e μ t Γ ( 1 η t )  for  t < 1 / η {\displaystyle e^{\mu t}\Gamma (1-\eta t){\text{ for }}t<1/\eta }
特性関数 e i μ t Γ ( 1 i η t ) {\displaystyle e^{i\mu t}\Gamma (1-i\eta t)}
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確率論および統計学において、ガンベル分布(ガンベルぶんぷ、: Gumbel distribution)は、連続確率分布の一種である。さまざまな分布に従う確率変数の最大値(または最小値)が漸近的に従う分布であり、極値分布のタイプI型に相当する。分布の名は極値統計学の先駆的な研究を行ったドイツの数学者エミール・ユリウス・ガンベルに因む。


概要

ガンベル分布を用いることで、ある河川の水位の年間の最大値のデータが過去10年分あれば、来年の最大水位を確率分布のかたちで予想することができる。 また稀にしか発生しない地震や洪水などの自然災害の発生する確率を予測することができる。 サンプルデータの分布が正規型または指数型である場合に、ガンベル分布は極値理論はこれらの予測に有用である。 ガンベル分布は最大値の分布をモデル化するが、最小値をモデル化するには元の値の負の値を使用するとよい。

ガンベル分布は、一般化極値分布(フィッシャー・ティペット分布とも呼ばれる)の特殊なケースである。 一般化極値分布は他には、対数ワイブル分布や二重指数分布(ラプラス分布)などがある。 確率密度分布を原点で反転させ、次に正の半直線に制限すると、ゴンペルツ分布が得られる。

多項ロジットモデル(離散選択理論では一般的)の潜在変数の定式化では、潜在変数の誤差はガンベル分布に従い、ガンベル分布を持つ2つの確率変数の差はロジスティック分布になる。

定義

定数 μ と正の定数 η > 0 に対し、確率変数 X分布関数 F(X)

F ( x ) = exp [ exp { ( x μ η ) } ] , < x < {\displaystyle F(x)=\exp \left[-\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}\right],\quad -\infty <x<\infty }

で与えられるとき、確率変数 X はガンベル分布に従うという。このとき、対応する確率密度関数 f (x)

f ( x ) = 1 η exp { ( x μ η ) } exp [ exp { ( x μ η ) } ] , < x < {\displaystyle f(x)={\frac {1}{\eta }}\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}\exp \left[-\exp \left\{-\left({\frac {x-\mu }{\eta }}\right)\right\}\right],\quad -\infty <x<\infty }

である。ガンベル分布は極値分布のタイプIに相当する。

性質

標準ガンベル分布

μ = 0 {\displaystyle \mu =0} かつ η =1のとき

F ( x ) = e e ( x ) {\displaystyle F(x)=e^{-e^{(-x)}}\,}

グラフの形状

モード(最頻値) : μ {\displaystyle \mu }

メジアン(中央値): μ η ln ( ln 2 ) , {\displaystyle \mu -\eta \ln \left(\ln 2\right),}

平均・分散

ガンベル分布の確率変数X とするとき、平均 E(X) および分散 V(X) は次のように表される。

E ( X ) = μ + γ η , {\displaystyle E(X)=\mu +\gamma \eta ,}
V ( X ) = π 2 η 2 6 . {\displaystyle V(X)={\frac {\pi ^{2}\eta ^{2}}{6}}.}

ここで γ = 0.577…オイラーの定数である。

モーメント母関数・特性関数

ガンベル分布の確率変数X とするとき、モーメント母関数 MX(t)

M X ( t ) = e μ t Γ ( 1 η t ) ( t < 1 η ) {\displaystyle M_{X}(t)=e^{\mu t}\Gamma (1-\eta t)\quad {\biggl (}t<{\frac {1}{\eta }}{\biggr )}}

で与えられる。ここで Γ(x) はガンマ関数を表す。

また、特性関数 φX(t)

ϕ X ( t ) = M X ( i t ) = e i μ t Γ ( 1 i η t ) {\displaystyle \phi _{X}(t)=M_{X}(it)=e^{i\mu t}\Gamma (1-i\eta t)}

で与えられる。

キュムラント母関数・キュムラント

ガンベル分布の確率変数X とするとき、キュムラント母関数 KX(t)

K X ( t ) = log M X ( t ) = μ t + log Γ ( 1 η t ) ( t < 1 η ) {\displaystyle K_{X}(t)=\log M_{X}(t)=\mu t+\log \Gamma (1-\eta t)\quad {\biggl (}t<{\frac {1}{\eta }}{\biggr )}}

で与えられる。 このとき、n 次のキュムラント κn

κ n = n t n K X ( t ) | t = 0 = { μ + γ η ( n = 1 ) η k ( n 1 ) ! ζ ( n ) ( n 2 ) {\displaystyle \kappa _{n}={\frac {\partial ^{n}}{\partial t^{n}}}K_{X}(t){\biggr \vert }_{t=0}={\begin{cases}\mu +\gamma \eta &\,(n=1)\\\eta ^{k}(n-1)!\zeta (n)&\,(n\geq 2)\end{cases}}}

となる。ここで ζ(n)ゼータ関数である。

参考文献

  • Gumbel. E. J.:Statistics of Extremes, Columbia University Press, 1963.

関連項目

離散単変量で
有限台
離散単変量で
無限台
  • ベータ負二項(英語版)
  • ボレル(英語版)
  • コンウェイ–マクスウェル–ポワソン(英語版)
  • 離散位相型(英語版)
  • ドラポルト(英語版)
  • 拡張負二項(英語版)
  • ガウス–クズミン
  • 幾何
  • 対数(英語版)
  • 負の二項
  • 放物フラクタル(英語版)
  • ポワソン
  • スケラム(英語版)
  • ユール–サイモン(英語版)
  • ゼータ(英語版)
連続単変量で
有界区間に台を持つ
  • 逆正弦(英語版)
  • ARGUS(英語版)
  • バルディング–ニコルス(英語版)
  • ベイツ(英語版)
  • ベータ
  • beta rectangular(英語版)
  • アーウィン–ホール(英語版)
  • クマラスワミー(英語版)
  • ロジット-正規(英語版)
  • 非中心ベータ(英語版)
  • raised cosine(英語版)
  • reciprocal(英語版)
  • 三角
  • U-quadratic(英語版)
  • 一様
  • ウィグナー半円
連続単変量で
半無限区間に台を持つ
  • ベニーニ(英語版)
  • ベンクタンダー第一種(英語版)
  • ベンクタンダー第二種(英語版)
  • 第2種ベータ
  • Burr(英語版)
  • カイ二乗
  • カイ(英語版)
  • Dagum(英語版)
  • デービス(英語版)
  • 指数-対数(英語版)
  • アーラン
  • 指数
  • F
  • folded normal(英語版)
  • Flory–Schulz(英語版)
  • フレシェ
  • ガンマ
  • gamma/Gompertz(英語版)
  • 一般逆ガウス(英語版)
  • Gompertz(英語版)
  • half-logistic(英語版)
  • half-normal(英語版)
  • Hotelling's T-squared(英語版)
  • 超アーラン(英語版)
  • 超指数(英語版)
  • hypoexponential(英語版)
  • 逆カイ二乗(英語版)
    • scaled inverse chi-squared(英語版)
  • 逆ガウス
  • 逆ガンマ
  • コルモゴロフ
  • レヴィ
  • 対数コーシー
  • 対数ラプラス(英語版)
  • 対数ロジスティック(英語版)
  • 対数正規
  • ロマックス(英語版)
  • 行列指数(英語版)
  • マクスウェル–ボルツマン
  • マクスウェル–ユットナー(英語版)
  • ミッタク-レフラー(英語版)
  • 仲上(英語版)
  • 非心カイ二乗
  • パレート
  • 位相型(英語版)
  • poly-Weibull(英語版)
  • レイリー
  • relativistic Breit–Wigner(英語版)
  • ライス(英語版)
  • shifted Gompertz(英語版)
  • 切断正規
  • タイプ2ガンベル(英語版)
  • ワイブル
    • 離散ワイブル(英語版)
  • ウィルクスのラムダ(英語版)
連続単変量で
実数直線全体に台を持つ
連続単変量で
タイプの変わる台を持つ
  • 一般極値
  • 一般パレート(英語版)
  • マルチェンコ–パストゥール(英語版)
  • q-指数(英語版)
  • q-ガウス
  • q-ワイブル(英語版)
  • shifted log-logistic(英語版)
  • トゥーキーのラムダ(英語版)
混連続-離散単変量
  • rectified Gaussian(英語版)
多変量 (結合)
【離散】
エウェンズ(英語版)
多項
ディリクレ多項(英語版)
負多項(英語版)
【連続】
ディリクレ
一般ディリクレ(英語版)
多変量正規
多変量安定(英語版)
多変量 t(英語版)
正規逆ガンマ(英語版)
正規ガンマ(英語版)
行列値
逆行列ガンマ(英語版)
逆ウィッシャート(英語版)
行列正規(英語版)
行列 t(英語版)
行列ガンマ(英語版)
正規逆ウィッシャート(英語版)
正規ウィッシャート(英語版)
ウィッシャート
方向
【単変量 (円周) 方向
円周一様(英語版)
単変数フォン・ミーゼス
wrapped 正規(英語版)
wrapped コーシー(英語版)
wrapped 指数(英語版)
wrapped 非対称ラプラス(英語版)
wrapped レヴィ(英語版)
【二変量 (球面)】
ケント(英語版)
【二変量 (トロイダル)】
二変数フォン・ミーゼス(英語版)
【多変量】
フォン・ミーゼス–フィッシャー(英語版)
ビンガム(英語版)
退化特異
  • 円周(英語版)
  • 混合ポワソン(英語版)
  • 楕円(英語版)
  • 指数
  • 自然指数(英語版)
  • 位置尺度(英語版)
  • 最大エントロピー(英語版)
  • 混合(英語版)
  • ピアソン(英語版)
  • トウィーディ(英語版)
  • wrapped(英語版)
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