クレローの方程式

クレローの方程式(クレローのほうていしき、Clairaut's equation)とは、次の形の微分方程式である。

y ( x ) = x d y d x + f ( d y d x ) {\displaystyle y(x)=x{\frac {dy}{dx}}+f\left({\frac {dy}{dx}}\right)}

この方程式の名はアレクシス・クレローにちなんだものである。また、次の一階偏微分方程式もクレローの方程式と呼ばれる。

u = x u x + y u y + f ( u x , u y ) {\displaystyle \displaystyle u=xu_{x}+yu_{y}+f(u_{x},u_{y})}

解法

常微分方程式

常微分方程式

y ( x ) = x d y d x + f ( d y d x ) {\displaystyle y(x)=x{\frac {dy}{dx}}+f\left({\frac {dy}{dx}}\right)}

を解くには、まず両辺を x について微分する。

d y d x = d y d x + x d 2 y d x 2 + f ( d y d x ) d 2 y d x 2 {\displaystyle {\frac {dy}{dx}}={\frac {dy}{dx}}+x{\frac {d^{2}y}{dx^{2}}}+f'\left({\frac {dy}{dx}}\right){\frac {d^{2}y}{dx^{2}}}}

整理して

0 = ( x + f ( d y d x ) ) d 2 y d x 2 {\displaystyle 0=\left(x+f'\left({\frac {dy}{dx}}\right)\right){\frac {d^{2}y}{dx^{2}}}}

を得る。これより、

0 = d 2 y d x 2 {\displaystyle 0={\frac {d^{2}y}{dx^{2}}}}

であるか、または

0 = x + f ( d y d x ) {\displaystyle 0=x+f'\left({\frac {dy}{dx}}\right)}

である。前者の場合、ある定数 C があって C = dy/dx となる。これを元の方程式に代入すると、

y ( x ) = C x + f ( C ) {\displaystyle y(x)=Cx+f(C)\,}

という関数の族が得られる。これをクレローの方程式の一般解という。

後者の場合、

0 = x + f ( d y d x ) {\displaystyle 0=x+f'\left({\frac {dy}{dx}}\right)}

という式からはただひとつの解 y(x) しか得られず、これを特異解と呼ぶ。特異解のグラフは一般解のグラフの包絡線になっている。

偏微分方程式

クレローの一階偏微分方程式

u = xux + yuy + f(ux,uy)

は、シャルピの解法により解ける。

p = uxq = uyF(x,y,u,p,q) = u - xp - yq - f(p,q)

とおけば、同方程式は F(x,y,u,ux,uy)=0 である。

Fx = -pFy = - qFu = 1
Fp = -x - fpFq = -y - fq

だから、補助方程式は、

d x x + f p = d y y + f q = d u x p + p f p + y q + q f q = d p 0 = d q 0 {\displaystyle {\frac {dx}{x+f_{p}}}={\frac {dy}{y+f_{q}}}={\frac {du}{xp+pf_{p}+yq+qf_{q}}}={\frac {dp}{0}}={\frac {dq}{0}}}

である。 後二式は dp = dq = 0 の意味だから、ux = auy = b とおくと、

u = ax + by + f(a,b)  … (1)

である。 よって、ab を積分定数と解すれば、(1) が完全解となる。

完全解の平面族に包絡面が存在すれば、その包絡面の方程式は特異解を与える。 実際、(1) を ab で偏微分した関係式

x + fa(a,b) = y + fb(a,b) = 0

と (1) から ab を消去できる場合には、解が得られる。

また、任意関数 g により、完全解の平面族の積分定数に関係 b = g(a) を与えたとき、その平面族に包絡面が存在すれば、その包絡面の方程式は一般解を与える。 実際、(1) に b = g(a) を代入した式を a で微分した関係式

x + g’(a)y + fa(a,g(a)) + fb(a,g(a))g’(a) = 0

と (1) から a を消去できる場合には、解が得られる。

外部リンク

  • Weisstein, Eric W. "Clairaut's Differential Equation". mathworld.wolfram.com (英語).