ネマティック液晶

ネマティック液晶(ネマティックえきしょう、Nematic Liquid Crystal)とは液晶の一種である。すなわち、その構成分子が配向秩序を持つが、三次元的な位置秩序を持たない液体である。配向方向は、配向子(Director)と呼ばれる単位ベクトル n によって表される事が多い。実験的に、巨視的なネマティック液晶の対称性は D h {\displaystyle D_{\infty h}} である事が知られているので、構成分子は n を軸に自由回転をしており、また向きに関しては上向きと下向きを50%ずつ含むことが結論される。

配向度

構成分子が全て n の方向を向いているのが理想的であるが、実際の ネマティック液晶の構成分子は n の方向からある程度熱揺らぎをしている。 この熱揺らぎの度合いは秩序因子(Order Parameter)すなわち巨視的な系の物性値異方性 Δ χ {\displaystyle \Delta \chi } と絶対温度T→0における巨視的な系の物性値異方性 Δ χ 0 {\displaystyle \Delta \chi _{0}} との比

S = Δ χ / Δ χ 0 {\displaystyle S=\Delta \chi /\Delta \chi _{0}}

により評価することができる(例えば、磁化率のような異方性を示す物性は、いずれも配向度の評価に用いることができる。また、 Δ χ 0 {\displaystyle \Delta \chi _{0}} は、分子物性値異方性 Δ κ {\displaystyle \Delta \kappa } を用いて Δ χ 0 = N Δ κ {\displaystyle \Delta \chi _{0}=N\Delta \kappa } と表すことができる。Nは系を構成する分子の総数であり、S は分子が配向子 n の方向にどれほど良く整列しているかの目安となる量である。全ての分子が n と平行なら S = 1であり、分子の熱揺らぎが大きくなると S は0に近づく。)

今、分子の n からの揺らぎ角を θ とすると、 Δ χ = 1 / 2 < 3 cos 2 θ 1 > N Δ κ {\displaystyle \Delta \chi =1/2<3\cos ^{2}\theta -1>N\Delta \kappa } と書き換えることができる。ここで<>は統計力学的な平均である。よって S は、微視的な分子の揺らぎ角を用いて

S = 1 / 2 < 3 cos 2 θ 1 > {\displaystyle S=1/2<3\cos ^{2}\theta -1>}

と書くことができる。