ヒドラスチン

ヒドラスチン
IUPAC命名法による物質名
  • 6,7-dimethoxy-3-(6-methyl-5,6,7,8-tetrahydro[1,3]dioxolo[4,5-g]isoquinolin-5-yl)-2-benzofuran-1(3H)-one
薬物動態データ
代謝Hepatic
排泄Renal
識別
CAS番号
118-08-1 チェック
ATCコード none
PubChem CID: 197835
ChemSpider 171234 チェック
UNII 8890V3217X チェック
ChEMBL CHEMBL497942 ×
化学的データ
化学式C21H21NO6
分子量383.395 g/mol
  • O=C2O[C@@H](c1ccc(OC)c(OC)c12)[C@@H]5N(C)CCc4c5cc3OCOc3c4
  • InChI=1S/C21H21NO6/c1-22-7-6-11-8-15-16(27-10-26-15)9-13(11)18(22)19-12-4-5-14(24-2)20(25-3)17(12)21(23)28-19/h4-5,8-9,18-19H,6-7,10H2,1-3H3/t18-,19+/m1/s1 チェック
  • Key:JZUTXVTYJDCMDU-MOPGFXCFSA-N チェック
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ヒドラスチン(Hydrastine)は、1851年にAlfred P. Durandが発見した天然に存在するアルカロイドである[1]加水分解すると、1910年代にバイエルが抗出血性薬として特許を取った[2]ヒドラスチニンが生成する。

名前の由来となったヒドラスチス(Hydrastis canadensis)等のキンポウゲ科の植物に含まれる。

全合成

ヒドラスチンの全合成は、1931年にロバート・ロビンソン卿らによって初めて報告された[3]。その後[4][5]、鍵となるラクトンアミド中間体(図の構造4)の合成が最も困難であったが、1981年にJ.R.ファルクらが単純な出発物質から4段階でヒドラスチンを全合成する事に成功し、大きなブレイクスルーとなった[6]。ファルクの合成では、パッセリーニ反応(英語版)を利用してラクトンアミド中間体4を構築することが重要なステップであった。

Falck’s total synthesis of hydrastine, the mechanism of the Passerini reaction for synthesis of the key intermediate is also illustrated

比較的単純な1,3-ベンゾジオキソールの誘導体1から出発し、リチウムメチルイソシアニドを用いたアルキル化反応により、イソシアニド中間体2を得る。中間体2をオピアン酸3と反応させると,分子内パッセリーニ反応が起こり,鍵となるラクトンアミド中間体4が得られる。続いて、POCl3を用いて脱水条件下で閉環反応を行い、次にPtO2を触媒として水素化反応を行うことで、テトラヒドロイソキノリン環が形成される。最後に、ホルムアルデヒドとの還元的アミノ化反応によりN-メチル基を設置して、ヒドラスチンが合成される。

関連項目

出典

  1. ^ American Journal of Pharmacy: 112, (1851) .
  2. ^ Römpp CD, Georg Thieme Verlag, (2006) .
  3. ^ “XXXI.—A synthesis of hydrastine. Part I”. J. Chem. Soc. 0: 236–247. (1931). doi:10.1039/JR9310000236. ISSN 0368-1769. 
  4. ^ “Synthesis of Hydrastine”. Nature 165 (4196): 529. (1950). Bibcode: 1950Natur.165..529H. doi:10.1038/165529a0. ISSN 0028-0836. 
  5. ^ “360. A new route to the phthalide-isoquinoline bases, and a synthesis of (–)-hydrastine”. J. Chem. Soc. 0: 1776–1780. (1950). doi:10.1039/JR9500001776. ISSN 0368-1769. 
  6. ^ “An intramolecular passerini reaction: Synthesis of hydrastine.”. Tetrahedron Letters 22 (7): 619–620. (1981). doi:10.1016/S0040-4039(01)92504-3. ISSN 0040-4039.