ヤチバエ

ヤチバエ科
Sepedon sphegea
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : ハエ亜目(短角亜目) Brachycera
下目 : ハエ下目 Muscomorpha
上科 : ヤチバエ上科 Sciomyzoidea
: ヤチバエ科 Sciomyzidae
学名
Sciomyzidae
英名
marsh flies
snail-killing flies
亜科
  • Huttonininae
  • Salticellinae
  • Sciomyzinae ヤチバエ亜科

ヤチバエは、ハエ目(双翅目)ヤチバエ科(Sciomyzidae)に属する種の総称。世界で58属512種が記録されている[1]

分布

ヤチバエ科の種は全ての動物地理区に分布するが、そのほとんどはヤチバエ亜科 Sciomyzinae の種であり、他の2亜科の種は分布が限られる(Huttonininae 亜科はニュージーランドのみ、Salticellinae 亜科はヨーロッパ北アフリカのみ)[2]

形態

Trypetoptera punctulata
キイロキタヤチバエ

成虫は体長2-11mmで、体色は黄褐色から暗灰色となる種が多い[1]。他の短角亜目の各科とは、(1)鬚剛毛と下額眼縁剛毛を欠く、(2)脛節末端部背面に1-2対の剛毛を持つ、(3)単眼剛毛は1-2対、(4)後単眼剛毛は交差しない、(5)頭楯は口縁より前方に突出しない、といった点で区別される[1]

卵は白色で長楕円形、幼虫は体長3-20mmとなる[1]

生態

幼虫は陸生貝類、あるいは淡水貝類に寄生する[1]。寄主の貝類を捕食する種もある[1]。幼虫が陸生貝類に寄生する種の場合、成虫は寄主とする貝類の貝殻に産卵する[2]。幼虫は湿地や湖沼の水際や水面、落ち葉の下で蛹となる[2]。幼生期の天敵にはヒメバチコマユバチといった寄生蜂の仲間が知られる[2]

成虫は河川や湖沼、水田などの水辺に近い草地などで見られる[2]。成虫は動物の死体や糞などを餌とする[2]

分類

ヤチバエ科は、近縁のハマベバエ科、ベッコウバエ科、ツヤホソバエ科とともにヤチバエ上科を構成している。ヤチバエ科の下位分類としては、ヤチバエ亜科、Huttonininae亜科、Salticellinae亜科という3亜科が認められる。古くはHuttonininae亜科を独立のHuttoninidae科とする主張や、Tetanoceridae科を独立させるという見解もあったが、これらは通常ヤチバエ科に含まれる。また近縁のヤスデヤドリバエ科 Phaeomyiidae を本科の亜科として扱う場合もある。

ヤチバエ科には現生種だけで58属512種が記録され、日本では11属23種が知られている[1]。なお日本に生息する種は全てヤチバエ亜科の種である[1]

下位分類

  • Huttonininae 亜科 - 2属9種。
  • Salticellinae 亜科 - 2属3種(化石種を含む)。
  • ヤチバエ亜科 Sciomyzinae - 60属500種(化石種を含む)。
    • ヤチバエ族 Sciomyzini
    • キタヤチバエ族 Tetanocerini

脚注

  1. ^ a b c d e f g h 末吉(2005)p.1229
  2. ^ a b c d e f 末吉(2005)p.1230

参考文献

ウィキスピーシーズにヤチバエに関する情報があります。
ウィキメディア・コモンズには、ヤチバエに関連するカテゴリがあります。
  • 末吉昌宏(2005)「ヤチバエ科」 In: 川合禎次、谷田一三(共編)『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』(2005年、東海大学出版会
ハエ目(双翅目) の科
動物界
節足動物門
昆虫綱
亜綱
有翅亜綱
下綱
新翅下綱
上目
内翅上目
カ亜目/長角亜目
クチキカ下目

クチキカ科

カ下目
カ上科
  • ホソカ科
  • チスイケヨソイカ科
  • ケヨソイカ科
  • カ科
ユスリカ上科
アミカ下目
ケバエ下目
ケバエ上科
カバエ上科
  • カバエ科
クロキノコバエ上科
チョウバエ下目
ニセケバエ上科
  • モモブトモリカ科
  • Perissommatidae
  • ニセケバエ科
チョウバエ上科
コシボソガガンボ下目
  • コシボソガガンボ科
  • ニセヒメガガンボ科
ガガンボ下目
ガガンボダマシ上科
  • ガガンボダマシ科
ガガンボ上科
  • シリブトガガンボ科
  • ヒメガガンボ科
  • オビヒメガガンボ科
  • ガガンボ科
ハエ亜目/短角亜目
ムシヒキアブ下目
ムシヒキアブ上科
  • Apioceridae
  • Apsilocephalidae
  • Apystomyiidae
  • ムシヒキアブ科
  • ツリアブ科
  • オドリバエモドキ科
  • ムシヒキアブモドキ科
  • Mythicomyiidae
  • Evocoidae
  • マドアブ科
  • ツルギアブ科
オドリアブ上科
ツリアブモドキ上科
  • コガシラアブ科
  • ツリアブモドキ科
ミズアブ下目
ミズアブ上科
アブ下目
アブ上科
アナアブ下目
アナアブ上科
キアブ下目
キアブ上科
  • キアブ科
ハエ下目
無額嚢節
ヒラタアシバエ上科
  • ノミバエ科
  • ニセヒラタアシバエ科
  • Ironomyiidae
  • ヤリバエ科
  • ヒラタアシバエ科
ハナアブ上科
額嚢節
無弁翅亜節
メバエ上科
ミバエ上科
ヤセバエ上科
  • バナナバエ科
  • マルズヤセバエ科
  • ナガズヤセバエ科
  • ニセヒメコバエ科
シュモクバエ上科
ヤチバエ上科
  • ハマベバエ科
  • ベッコウバエ科
  • ケブカハマバエ科
  • Helosciomyzidae
  • Ropalomeridae
  • Huttoninidae
  • Heterocheilidae
  • ヤスデヤドリバエ科
  • ツヤホソバエ科
  • ヤチバエ科
ハヤトビバエ上科
  • キイロコバエ科
  • トゲハネバエ科
  • フンコバエ科
  • Nannodastiidae
シマバエ上科
ヒメコバエ上科
  • ハモグリバエ科
  • ハナホソバエ科
  • ヒメホソバエ科
  • ナガショウジョウバエ科
  • クチキバエ科
  • Fergusoninidae
  • Marginidae
  • Neminidae
  • Neurochaetidae
  • トゲアシモグリバエ科
  • ヒメコバエ科
  • ケシショウジョウバエ科
  • シダコバエ科
  • ニセヒメホソバエ科
ミギワバエ上科
チスイコバエ上科
  • クチキバエモドキ科
  • Australimyzidae
  • ミツバチシラミバエ科
  • ニセミギワバエ科
  • チスイコバエ科
  • キモグリバエ科
  • ヒゲブトコバエ科
  • Inbiomyiidae
  • シロガネコバエ科
  • ハマベホソバエ科
弁翅亜節
イエバエ上科
ヒツジバエ上科
シラミバエ上科